HAPPY! HAPPY BIRTHDAY!!


 


 
 火曜日の三時間目は音楽室が空き教室になる。授業を行う第一校舎ではなく離れた旧舎にあるので、
このときばかりはどうしても人気がない。
 ただ窓が大きいので、昼間は日差しがあたって気持ちいいのだ。獄寺はそれが好きだった。
 大きなグラウンドピアノに隠れるように座り込んで、山本とキスをする。防音設備も施されているの
で、時々雰囲気がながしてくれればここで致してしまうときもある。火曜日三時間目の音楽室は、二人
の秘密の場所なのだ。
 
 山本の腕がそっと伸びて獄寺の背中を抱く。その手のひらの温度が気持ちいい。引き寄せられた体は
山本の体と隙間なくくっついて、自然と口付けが深くなる。お互いの鼻が邪魔で少し角度をかえると、
さらに奥へ奥へと侵入してくる熱い舌先。お互いの唾液がまざりあう、いやらしい音が獄寺の耳を犯す。
 ここまま押し倒されて、より濃厚な交わりへ。
 常ならばそうなるはずなのだけれど、今日は違った。山本が顔を離す。つぅ、と糸を引く唇が恥ずか
しくて、獄寺はすぐにうつむいた。
「どういうことだよ、獄寺」
 今の今まであれほど濃厚な口付けを交わしていた唇をとがらせて、不満げに山本が言葉を落とす。離
れていかない腕に不本意にも安堵しながら、獄寺は軽く目の前の男をにらんだ。
「しょうがねーだろ。俺のせいじゃねぇよ」
「そらそうだけど」
「だいたいてめーがちゃんとスケジュールみとかねーのが悪い」
 とがった山本の唇についばむようにキスをすると、山本の眉間のしわが一つ消える。
「だって……」
「だってじゃねぇよ、馬鹿」
「楽しみにしてたのに、俺」
 俺だって楽しみにしてた。と、喉もとまで出かかった言葉を飲み込んだ。山本の腕の中をごそごそと
動いて背中を向け、ポケットから煙草をさぐる。
「せっかく、誕生日を獄寺と二人ですごせると思ってたのに」
「だからしかたねーだろうが、この馬鹿!」
 もう一つおまけに「馬鹿」といえば、獄寺の肩に顔をうずめて山本は黙り込んでしまった。


 今月。四月の二十四日。山本の誕生日である。
 ひらひらと桜吹雪も舞い散って。あとは梅雨入りへの憂鬱を抱き始める、間の悪いときに生まれたの
がこいつらしいと獄寺は思っている。
 恋人として付き合いはじめてから、二回目の誕生日。山本はただ一緒に過ごせればいいと、去年と同
じことをいった。獄寺もそれはなかなか可愛いコトを言うと思ったし、叶えてやりたいとおもったのは
事実で。もちろんそのつもりだったのだけれど。
「まさか誕生日、修学旅行とはなー」
 山本の言葉に、獄寺は言葉もなくただうなずいた。
 彼らの通う並盛中学校の修学旅行は時期がはやい。新学期がはじまって桜が散るとすぐなのだ。
 それがたまたま、山本の誕生日に重なってしまったのである。旅行は二泊三日。誕生日は真ん中に挟
まれるかたちになってしまうので、もはやどうしようもない。
 本当に間が悪い。
 しかも、
「班までわかれるとか、ありえねーよ」
 なのだ。
 出席番号順でくまれた班は、獄寺とツナは一緒になったけれども、山本は見事にはなれてしまった。
 なにしろ班行動の多い修学旅行。一日の見学はもちろん、泊まる部屋ももちろん違う。
 獄寺と一緒に誕生日をすごすことを楽しみにしていた山本にとっては、これ以上ないショックだ。
「……いっしょにさぼる?」
「ばーか、俺は十代目をお守りしなくちゃだめなんだよ」
「ふーん」
 またツナか。という不満を聞かされる前に、その唇をふさぐ。山本も不満げながらもそれに応えて、
目を閉じた。
「まあ、隙をみて会いに行ってやるよ」
「本当に?」
「おう」
「誕生日に、獄寺とキスできるかな。俺」
「別に誕生日じゃなくてもしてるだろうが」
「誕生日にするキスは特別なんだって!」
 よくわからないけれど。わかる気もする。
 なんとなく山本が可哀想に思えてよしよしと頭をなでると、そのまま押し倒されてしまった。結局吸
わずじまいになってしまった煙草は指からこぼれおちて床に転がる。それを目で追う前に、甘い快感で
体がしびれた。

(まあ、ちょっと祝ってやる時間ぐらいあるだろう)

 体を這う山本の手のひらの感覚に目を閉じながら、やっぱり誕生日は一緒にすごしてやりかったと悔
やむように一つため息を落とした。
   

 

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と、いうことで。
自分を追い詰めてみよう連載です。本当に追い詰められて風とともに消えていたらすみません。
しかも山本の誕生日と5554番イサナミさまのニア番リクエスト「修学旅行」を一緒にかいてしまおうという
企画だったり・・!

頑張って書きます。山本の誕生日には間に合えばイイナと思ってはいます。