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「十代目、風呂の時間だそうですよ」 獄寺達が泊まっている旅館は、お世辞にも綺麗だとか新しいといえるものではなかった。 「えっと、山本も誘った方がいいよね」 風呂へ行く準備をしながら山本を探すツナに、獄寺は部屋の隅を指さして「山本ならあそこでバカ面してます」と毒づいた。 「おーい! 一緒に風呂いこーぜ!」 あまり大きな声をだすと天井が落ちるぞ、とどこからかからかう声が聞こえた。
「オレ、こんな大勢で風呂はいんの初めてなのな」 オレも山本とならありますけど、などと言えるわけもなく、代わりとばかりに隣にたつ野球馬鹿の尻を蹴り上げた。 「ってー! なんだよ獄寺!」 非難の声をあげる山本を一瞥して、獄寺は自分のシャツの裾を掴む。当然、脱ぐためだ。 「わー、やっぱすごい人だね」 洗う場所あるかな? と首をかしげるツナに答えるために視線をめぐらせると、離れた場所に個々に幾つか、席が空いていた。 「これだとバラバラに座らないと無理っすね」 さてどこに座ろうかと席を探し、一番近いところに腰を落ち着ける。蒸気で曇っていた鏡にシャワーをかけると、露がおちて見えた向かいに、山本が座っていた。 (げっ) と思わず心の中で声を出し、鏡から目をそらす。 長居は無用とばかりに急いで体を洗い始めた所で、後ろから話し声が聞こえた。 「なあ山本」 どうやら山本の近くに座っていたのが知り合いだったらしい。周りから持ちかけられた質問にあやふやな返事をしながら、山本がちらちらと獄寺の方を伺ってくる。 (……後でぶっとばす) とはもちろん声にせず、無視に徹することにした。 「ちょっと見してみろよ」 ああクラスの人気者というのは大変だな、と他人ごとを決め込んで、ひたすらに体を洗う。 「おい、やめろって!」 ガタガタと争うような騒がしい音がして、納まったと同時に歓声があがった。 「さ、さすが山本……」 その声に周りの野次馬も参加してきたらしく、 「こら彼女も大変だろ」 かくも日本の中学生男児というのは頭のわるいものだろうか、と獄寺はため息をついた。 「もういいだろ、オレは体洗うぜ?」 そう言う山本の意見など、当然のごとく誰も聞いてはいない。 「おい、誰か山本よりでかい奴いねーのかよ!」 おい獄寺見せろよ! と誰ともなく声をかけてきたが、当然無視だ。 「何だ、見せたくねーのかよ?」 本当も何も最初から大きいとも小さいとも言ってない。 「やっぱ山本には勝てねーよな」 獄寺自身がため息をつくぐらい、どうしたってその名前を無視できない。悲しい性だ。 「んだとっ、別に大きさじゃそう負けてねーよ!」 たぶん。 そういう山本の表情は笑顔である。ただ、どうみても目が笑っていない。 (馬鹿馬鹿しい) そして獄寺は、一瞬とはいえクラスの男子に踊らされそうになった自分を恥じ、桶にたまったお湯を頭からかぶった。 と声を落としてくる。 同じトーンでそう返せば、 「ていうかさ、これ以上お前の裸を他の人間に見せるとか、オレは耐えられねぇ」 言葉と一緒に山本の手が獄寺の足に向かって伸びてきた。 「オレ、狂っちまうぜ?」 嫉妬に狂った男はこわいのな? とはいつもの笑顔で囁いて、手をさらに奥へ、タオルの中へと忍ばせてくる。 首を傾げて問いかけてきたところで、こちらに選択肢などあるはずがない。 「てめぇは、ほんと最悪だなっ」 不埒な山本の手を振り払って、きつく相手を睨みつける。対する表情はやはり笑顔だが、奥の黒い目は本気だ。 「おい」 タオルを腰に巻きつけながらそういえば、かすかなバツの悪そうな笑い声が返ってきた。 「あー、いまたてねぇから、あとで追いかけるよ」
つづく |
大変、大変、たいっへんにお待たせいたしました!(土下座)
あれ、もうかれこれ一年ですか? おかしいな……。
そのわりに、なんか変な話で申し訳ないです。違う、違うんです、
私が書きたかったのは、なんというか修学旅行特有の馬鹿馬鹿
しさというか、なんというか。
もう色々筆力不足でわけのわからない出来になってしまいましたが、
とりあえずお風呂場編?終了です。
続きはまた気長に、気長に、待っていただけると嬉しいです。