君の声が聞こえたなら。


 

 

 

 部屋の大掃除をするから手伝いに来い、と。
 呼び出されたのが、二時間ほど前。
 自分の部屋の掃除も店の手伝いも放り出して、年末の諸々の雑用も後回しにして獄寺の所に来た。
 獄寺の部屋はいつになく荒れている。もともと物がすくないのが唯一の救いだけれど。


「山本ーそっち持て」
「はいはい」
「そこ角気をつけろよ」
「はいよー」
「後でアレも運ぶからな」
「おーう」


 いつになくホコリっぽい獄寺の部屋で、おたおたと二人の影が動く。
 獄寺はエプロンに三角頭巾、そしてマスクという完全防備ぶりだ。なんでもハウスダストに弱いらし
い。

(獄寺のエプロン姿ちょーかわいい……。あとで裸エプロンとかしてくんないかなあ)

 絶対しない。
 という獄寺の鉄拳は幸いながら飛んではこなかったけれど、山本の鼻の下はだらりとのびて冷たい目

見られた。

(ああもう、獄寺のこんな可愛い姿見れるんなら、大掃除だって俺いつでも手伝う。ていうか一緒に住もうぜ獄寺)

 聞こえていないと思えば好き勝手独白してしまうが、仕方ない。
 だって獄寺がすきだから。

「山本」
「んー?」
「後で飯おごってやる」
「サンキュ」

 その部屋の掃除も一通りおわって、コンビニのおにぎりとカップラーメンをおごってもらって、だらりと寝転がって一息
ついていると、獄寺がぼそぼそといいわけを口にし始めた。

「年末には大掃除をするもんだって十代目がおっしゃてだな」
「うん」
「俺もしてみようとおもったんだ」
「うんうん」
「けどこれが意外と大変で、片付けようとすればするほど散らかって」
「そういうもんだよなあ」
「もう一人じゃ手におえなくなった」
「うん」

 そこで少し言葉をとめて、目をそらした。 

「だから……その、悪かったな」
「ん?」
「……急に呼び出して。お前だって大掃除あるんだろうに」

 ちょっと下をむいて照れたように謝る。

(ほんとかわいいなー獄寺。結婚してくんないかなー)

 家具の位置がかわって、いつもと少し違う部屋。まだエプロンをつけた、いつもより少し素直な恋人
 たまらず横で寝転がる獄寺に後ろから抱き付けば、ぎろりと睨まれた。

「俺、獄寺が呼んでくれるんなら、どこでも行っちゃうんだろうなあ」
「はあ?」

 こうやって一緒にいればいるほど、いつもと違う獄寺が見られるから。

(あとどれくらい、色んな獄寺を見られるんだろう)

 訝しげな目で見てくる獄寺に軽く口付けると、耳まで赤くして山本に抱きつき返した。

「……するか?」
「…………何を?」
「聞くな馬鹿野郎」

 まさか獄寺の口から聞けるとは思わなかった言葉に、不覚にも聞き返してしまう。

「いや、ゴメン、つい。ていうかする! 絶対するっ!」

 じゃあしない。とか言われては宝くじより確立の低い獄寺の気まぐれが無駄になってしまうので、獄寺が二の
句をつぐ前に言葉を畳み掛けた。

「ばぁか」

 獄寺が小さく笑う。
 
「獄寺」
「あんだよ」
「好き」
「そうか」
「うん」

 いつもより少し綺麗な部屋。いつもより少し素直な恋人。
 これ以上好きになんてなれないと思うぐらい君が好きなのに、昨日より今日、さっきより今。獄寺を
好きに
なっている。

「好き」

 もう一度囁くと、しつこいと怒られて唇を塞がれた。

「黙ってしろ」

 なんて可愛いことをいうから、その後はもう言葉もなくて。

 


 だってお前がすきだから。
 お前が呼んでくれたならどこへだっていくし。抱きしめてやりたい。

 ついばむように獄寺の体中にキスをおとしながら、もしかして今なら裸エプロンしてもらえるんじゃないかとか、
淡い期待を抱いてしまう山本だった。

 

 

 獄寺の裸エプロンが見たいんです。
  いきなり本音トークで申し訳ないです。(本音なんだ!?) でもだって、見たいんだもん!!

  もう私の部屋の大掃除が終わらなくて終わらなくて、腹が立ったので山本と獄寺も大掃除をすればいいと思いました。
 

  裸エプロン……(まだいってるよ)