短く笑って、長く泣く。 (中編)
ふとみると、獄寺はすこし俯きながら歩いている。 獄寺は。 「……山本」 ふと、思い出したように獄寺が俺を呼ぶ。 その先にある言葉は、わかっている。 「あの……な」 お前を、攫ってしまおうか。 女に笑顔を振りまいているお前を見守れと? そんなこと、出来るはずがない。 「山本?」 そう思ったときには、体が動いていた。 「お、おいっ! やまも……っ!」 ドン、と。 「ん……っ」 お前が。 獄寺の口内に舌を突き入れて、蹂躙する。奥でおびえている舌を強引に誘い出して、絡めた。 「……ぁっ、や、……ま」 歯列をたどり余すことなく中を犯せば、あいた唇の隙間から、濡れた声が漏れる。 「……ば、かやろっ。ここ、どこだと」 物影にかくれているので、覗きこもうとしなければ見えないだろうが、誰かがくる可能性は十分にある。 「それとも、見てもらうか?」 お前がいったい誰のものなのか、皆に証明してもらえばいい。 「山本……なんで」 信じられないといった顔で獄寺が俺を見る。 低いトーンで耳元に囁けば、獄寺の体がびくりと震えた。 「……獄寺」 いつものように、獄寺を気遣う余裕などなかった。 「ほら、もっと啼けよ」 空いている手で獄寺自身に手を伸ばせば、緩やかに立ち上がっていて。嘲るように「淫乱」といってやると、 「も、やめ……ろ、頼むからっ……んっ」 先走りを指に絡めて、後ろを探る。するとそこはいともあっさりと俺の指をのみこんで、奥へと誘った。 「こんなやらしい体で、女なんて抱けねぇな」 睨み付けるようにそういえば、負けじと獄寺からも強い視線が返ってくる。 苦しいだろうことは承知で、指を増やしてむちゃくちゃにかき回した。 「は……あっ。んっ、く、ああっ」 本気で誰か来てくれればいいと思っていた俺は、さらにあおるように前立腺のあたりを強く刺激する。 「んあぁっ! も、やま、も……んぁ、やめ、ふぁっ」 かみ殺しきれない獄寺のかすれた声と、中から聞こえるいやらしい音と。 もとより獄寺の意見など聞く気もなく、ただこいつを辱めるためだけの質問。 「やめ、たの……む、からっ。山本っ!」 力の抜けてる獄寺の腕をつかんで立たせ、壁に押し付けて片足を持ち上げる。 「山本……っ!」 獄寺の目の中に俺の姿が映る。必死で情けなくて、馬鹿みたいにこいつだけを見ている自分の姿。 そう思って一瞬動きが止まったとき、近くで話し声が聞こえた。 「誰か来た……」 やはり気付かれたんだろうか。これだけやってれば当然という気もするけれど。 すると案の定、二人組の女がなにやら小声で話しながらこっちに向かってきていた。こっそり様子を伺うつもり 「……もと」 と。気配をさぐるのに集中していた俺は、獄寺の声に気付かなくて。 「まもとっ」 二度目に名前を呼ばれて振り返ろうとしたときに、両目をふさがれた。 「え……?」 突然真っ暗になった視界が、獄寺の右手によるものだと頭で理解するのに少し時間がかかって、間抜けな返事 「るな……っ」 そいう獄寺の声が、少し震えていて。 「獄寺?」 なに? 「なぁ、獄寺さっき、女の子からラブレターもらってなかった?」 強い口調で訊ねれば、獄寺は少し黙ってから観念したように口を開く。 「あれは……お前に、渡せっていわれて」 断る理由もなくて、でもきっと自分より女のほうを山本が選ぶだろうと思ったら渡せなかった。と。 だいぶ自分の都合のいいように解釈したけど、そんなようなことを、言葉を区切りながら獄寺が言った。 「じゃあ、別に俺と別れるとか考えてたわけじゃないんだな」 獄寺の声も、なんだかもう耳に入らなくて。 「お、おい山本!?」 獄寺の声が響く。 「ごめん獄寺、嫉妬した」 意味がわからないとぼやく獄寺を抱きしめて、キスを落とす。獄寺は戸惑いながらもそれに応えて、腕を背中に 「もう、お前ヤだ……。面倒くせぇ」 「でも好きだ、獄寺。好き」 獄寺もだんだんと冷静さを取り戻してきたらしく、今の状況を思い出し始めたようで、だんだんと目つきが怖くなっ 「いてぇって!」 涙目になりながら獄寺がズボンをあげる。ちょっともったいなかったかなとか考えていたことがばれたらまた殴られ 「帰るぞ!」 そういって獄寺が早足で歩き出した。俺はその横に駆け足で並んで、そっと手をつなぐ。 「離せ」 それでも、繋いだ手は離れない。 「獄寺―」 そう言った獄寺の顔は、少しだけ笑っていたと思う。 |
お待たせしたわりには……で申し訳ないです。
しかも予定より無駄に長くなったので、前中後になりましたー。
ほっといたら最後までしちゃいそうで困っちゃいますネ!(ネじゃないよ…)