く笑って、長く泣く。 (後編)


 

 

 

 その後は二人とくに言葉もなく、ただ少し早足に獄寺の部屋に向かった。
 それから雪崩れ込むようにベッドに転がって、いつもより少し余裕のないセックスをした。

 相変わらず獄寺は可愛くて、やっぱり何があっても手放せるわけがない。

「そうだ……」

 行為の後。
 俺の腕の中でうとうとしていた獄寺が。思い出したようにもぞもぞと動く。

「なに? 獄寺」
「あの、手紙。渡さねぇと、お前に」

 脱ぎ捨ててベッドからおちたズボンを手繰り寄せて、可愛らしい花の便箋を取り出した。

「ほら……、名前は忘れたけど中に書いてあると思……」

 言葉をつづける獄寺の唇を、そっと覆う。
 だって、やっぱり少し獄寺が泣きそうだったから。
 それからその手紙を受け取って、迷うことなく二つに裂いた。

「や、山本!?」
「俺は……」

 以前までなら、応えられなくも嬉しかった手紙も。
 獄寺を不安にさせるものならば、この世から消えてしまえ。

「お前しか見えないから」

 だから、俺を不安にさせないで。獄寺。

「せ、めて……中ぐらい見てやれよ」
「見てほしいの?」

 そう聞き返せば答えは返ってこなくて、小さく苦笑する。

「俺は、獄寺のものだから。獄寺はもう、こんなもの受け取ってこなくていいから」
「なら……」

 獄寺は小さく口を開いて、布団に少し顔を隠すようにして言葉を続けた。

「お前も……、もし俺宛の渡されても、受け取んなくていい」

 言われずとも、と。答える代わりにキスをした。

 

 俺の全てが獄寺のものであればいい。
 だから、獄寺の全てが俺のものになればいい。

 少し、前までの俺は。
 特に何かにこだわりはなく。野球以外のものは、別になくても良かった。
 こんなにも醜くて、汚くて。
 犯しても、汚しても。壊しても。
 自分のものにしたいなどという感情など、知らなかった。

 獄寺を俺から奪うものならば、迷うことなくあの手紙のように二つに裂いてしまうだろう。

 それでも。
 この汚い凶暴な感情が、獄寺のナカにもあればいいと確かに思う。

「獄寺」
「ん?」
「俺ってさ、結構最低なヤツみたいだ」

 さっきつけたばかりの背中のキスマークに指を這わせながら呟けば、獄寺が小さく笑った。

「そんなの、いまさらだろ」

 そっかいまさらか。といえば、もう一度いまさらだと返って来た。

 


 獄寺が、好きだ。
 泣きたいほどの、狂おしいほどの、獄寺を思う気持ちの名前を探す。
 

 独占欲と。嫉妬と。
 ひとかけらの、愛。

 

 

 

そして獄は山の背中に爪あとをわざと残しておけばいいと思ったり。
ようはいつものバカップルでございます。
なんでこんなに長くなってしまったのかって? 途中でえろが入ったからですよ(どーん)。

もっさんはものすごくヤキモチ妬きだと思う。獄はものすごくヤキモチを妬くのが下手だといい。
とか思ったのに、伝えたいことを半分も伝えられなかったような……。
精進します。ここまで読んで頂いた方、ありがとうございます。