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髭剃りの細かいモーター音が殺風景な部屋に響く。 「おう」 そんなこと、お前に言われるまでもなく自覚してるっつうんだ。スケコマシ。 「そんでそのまま俺んちに来たってわけだろ? いくらなんでも、そら無茶苦茶だろうが」 だから、んなコトわかってんだよ。黙れヤブ医者。 「っていうかな。その前に今この状況でお前が俺んちにいることをあの坊主がしったら、俺がとばっちり食うんだよ。勘弁してくれ」 それは、悪かった。 女といちゃこいてるトコロに突然俺がやってきて邪魔をされ、シャマルも相当機嫌が悪いらしい。 「とにかく帰ったほうがいいんじゃないのか? 隼人。そんなワガママはお前らしくねぇだろ」 ちらりと本音を漏らせば、シャマルはまた一つため息をついて俺の横に寝転んだ。 「ほんとらしくねぇな。ボスの命令なんだろ?」
だから今回、護衛をかねて山本とその女とが見合いをし、最悪しばらく付き合うことになるだろうということも、あらかじめ十代目に確認されている。 だからシャマルがいうように、これが確かに仕方のないことで。 「それでも、見合いや……結婚なんて、自分に出来ないことを他の女がやるのは、許せねぇってか?」 茶化すようにシャマルは言ったが、笑えなかったのはそれが本音だったからで。 「……本当なら、山本はそうやって幸せになるはずだった」 何もかも捨てて俺のところに来た山本。 だけど。だからこそ。 不安になる。 「はたから見てりゃ、この上なく幸せそうだがなぁ……」 確かに俺といるときのアイツは尻尾があれば振り回してるだろうというぐらい嬉しそうだし、いつまでたっても俺が好きで堪らないみたいだし。 「とにかく、世の中考えすぎるとろくなコトがねぇってな。飲んで忘れろ」 そういって立ち上がり、どこからか一本の赤ワインを取り出してきた。 「年代もんだ」 「あ、おいコラ! 年代もんだって言ってるだろうが! 味わえ!」 うるせぇと一声返して、そのまま一気に飲み干す。 とにかくもう、今は山本のことなど忘れてしまいたかった。
薄く目をひらくとあたりにはワインの空き瓶やビールの缶が散らかっていて、どれだけ飲んだのか思い出すにつれて頭痛がしてくる。 「誰だぁ?」 近くでのそりとシャマルが立ち上がる音がした。どうやらヤブ医者も飲みつぶれて転がっていたらしい。 ……本当に飲みすぎた。頭がいてぇ、気分がわりぃ。水が飲みてぇ。 シャマルが戻ってきたら水を持ってこさせようとか考えていると、遠くから怒鳴り声が聞こえてきた。 「……ろっ?」 何となく嫌な予感がした。 ドンドンと大きな二つの足音が、部屋に向かってくる。 「獄寺!」 そして扉がひらくなり現れたのはやっぱり、山本だった。 「な、お前何で……!」 それから山本は部屋の様子を見渡して、顔を険しくさせる。 「獄寺、何やってたんだ?」 ふと冷静に辺りを見渡せば、辺りには酒の空き瓶と、俺の上着が思わせぶりに散らかっていて。 「俺が何をしようとてめぇには関係ないだろうが! だいたい追いかけてくんなよ! うぜぇ」 みれば山本の顔は泣きそうになっていて。よほど走ってきたのだろう、もう冬だというのに汗をかいている。 「答えろ!」 山本の怒鳴り声が、頭痛を誘う。こっちは酒のんでフラフラなんだよ、怒鳴るな馬鹿。 「……きだ」 ガンガンと。頭痛がする。 それでも、言葉はかってに口からすべりおちて。
ドン、と。山本が強く壁を叩く音がした。
どんな御伽噺だってそうだろ? 幸せな時間は、必ず終わるんだ。
山本が見たこともないような、今にも泣きそうな暗い顔で笑う。 と俺がいうと、山本が乱暴に俺を引き寄せてキスをした。 「さよならだ、山本」 一言、確かな口調で呟く。 「それで、いいんだな? 獄寺」 山本の言葉に答える代わりに、いつか交換した指輪を外して遠くで空いたままになっている窓にむかって力いっぱい投げつけた。 「さよなら、獄寺」 俺に背を向けた。 それなのに。 山本は最後まで何も言わずに、部屋の外で成り行きをみていたシャマルを一度殴りつけてから出て行った。
赤くなった頬をさすりながら、シャマルが部屋に入ってくる。 それには何と答えていいのかわからない。さっきつくった笑い顔をどうやって崩せばいいのかはもっと分からない。 「って、それはお前もか……」 何いってんだよ、と言ってやろうと思ったところで、シャマルの手が俺に伸びた。それからゴツゴツとしたオヤジくさい手で、俺の涙をすくう。 「ほんとお前らは、いつまでたってもそうガキ臭い恋愛しかできねぇのかなぁ」 そういって俺を抱きしめて、子供あやすときみたいに背中を叩いた。 「あれで、よかったんだな?」 そういうシャマルの声がなんだかさっきの山本の声と似ていたので、俺は答えることもできずに、声をかみ殺して涙を流した。
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NOTシャマ獄!
10年後の獄とシャマの関係は、兄貴と弟のようでもいいかもしれない。
何だかんだで隼人をほおっておけないシャマル先生と。
そんなシャマルになんだかんだで甘えちゃってる獄寺くん。
いや、シャマ獄も好きなんですけどね!