わたしのすきなもの
と。 「誰!?」 けれどこの瞬間、山本は猛烈なスピードでこの女優が嫌いになっていた。 (なんだよこんなん胸がでかいだけじゃん。獄寺ふだん俺のこと巨乳好きって馬鹿にするくせに自分だってそうじゃん。そらちょっと顔立ちも綺麗かもしれないけど獄寺のほうが綺麗だしかわいい。いやいやそんなことじゃなくて) 考えれば考えるほど気に食わない。唇を尖らせて眉をしかめて、目をそらす。胸のあたりがむかむかして気持ち悪い。 (なのにこんなぱっとでの女優なんかに「すき」とかいうなんて、いくらなんでもひどすぎる) テレビの中で恋敵はにこにこと笑っている。それをみている獄寺は、やはり楽しそうだ。 「何だよ獄寺、こんな胸でかいだけの女がいいわけ?」 だからそのむかむかを晴らそうと、出来るだけ馬鹿にしたふうを装って山本は鼻で笑った。 「あぁ?」 言葉が続かなくて、飲み込む。そもそも山本にとっても好きな類の女優なのだ。悪いところなんてぱっとすぐには出てこない。 大体胸がでかいとか、顔が綺麗とか、女らしいとか。そんなことで獄寺の「すき」がもらえるのなら、自分では到底勝ち目がないではないか。 「なんでも、ない」 獄寺なんて嫌いだ。と、声に出さずに胸で叫べが余計にむかむかして、どうしようもない。 「んあっ」 そういって笑う獄寺の顔があまりにも楽しそうだったので。 「ひでーよ! ごくでら!」 そんなこと、言っただろうか。 巨乳だし。 「それをお前好き勝手けなしやがって、だからお前のすきは信用ならないっていうんだ。ばか」 別に好きだけどけなしわけじゃない。 (不安で……) 少しでも獄寺にこっちを向いて欲しかっただけなのだ。 「……しってるっつの」 山本武は、決して頭の回転の遅い男ではない。普段は野球にばかりつぎ込んでいる労力を脳におくりこんで、獄寺の言葉の意味を考えた。 (あれ……これって) もしかして。もしかしなくても。 (俺、獄寺に愛されてる?) 考えるまでもなく目の前の獄寺は顔を赤くして山本を睨みつけて「なんだよ」だなんていったりする。それがあまりにも可愛いものだから思わずキスをすると力一杯殴られてしまった。 (嫉妬してくれたりとか?) いま自分が獄寺の言葉に一喜一憂しているように。 (そうだったら、嬉しい) それに、とても愛しい。 獄寺以外のこと、簡単に好きっていってごめん。
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拍手で「アイドルをすきになる獄寺」を見たいといっていただいたので
書いてみたのですが、冒頭から女優になってるしなんだか求められている
ものと違う気がひしひしとしてます。すみません。
山本=巨乳好き 獄寺=貧乳好き
自分のなかのこの公式がいつ出来たのかが不思議・・。