2
「獄寺」 と名前を呼ぶと「ん」と小さく返事がもどって、抱きしめると肩が小さく震えた。 そのまま獄寺の体を押し倒してシャツのボタンに手を掛ける。するとその手を獄寺がそっと押さえた。 「はじめに言っとくけどな」 そんなの俺だってわかってる。獄寺の言いたいことがわからなくて首を傾げた。けれどすぐ俺の手を押さえる獄寺の指が冷たくなっているのに気付いて、「もしかして」の仮定が頭をよぎる。 「……獄寺、不安?」 そら一応健全な中学生だから。エロ本ぐらいもってるし、獄寺と一緒にみたこともある。でもそれは興味があるぐらいのもので、獄寺が気にしているなんて思わなかった。 あ、やばい。いま絶対嬉しそうな顔してた、俺。 「後から、やっぱ胸ないと無理、とか。女じゃねぇと無理とか、言われても、俺はしらねーぞってことだよ」 ああなんてかわいい生き物なんだろう。大好きだ。 「ヤったら違ったとか飽きたとか、そんなの、俺は……っ」 眉間にシワをよせてまくし立てるようにいう獄寺の口をキスでふさいで、そのまま鼻の頭をくっつけて、強く目を合わせる。 「それ以上いったら、怒るぜ。獄寺」 それからなだめるように優しく何度か頭をなでてやると、迷いながらも獄寺の腕が俺の背中に回された。 「一年以上さ、付き合ってんだぜ。俺たち」 そっと訊ねると、獄寺は俺の胸に顔を隠して小さく首を振る。 「……わ、からねぇ」 もしも。と言葉を続けて、そこで獄寺は黙ってしまった。もしも俺の思っているのと獄寺が違ったら、別れるとでもいいたいんだろうか。 「俺も……」 獄寺を抱き返しながら、言葉を落とす。 「不安だよ。こんなことして獄寺に嫌われたらたまんねーし、立ち直れない。やっぱり無理だから別れるとかなったら、もう生きていける自信ない」 だって獄寺が好きだから。大切だから。必要だから。 「でもそれでも、俺、獄寺に触りたいんだ。もっと近い距離があるならそこにいきたい。我慢できねーよ」 だって獄寺が好きだから。 「恥ずかしいやつ」 そういう獄寺からはさっきのような辛そうな表情は消えていて。
「好きだよ」 と。囁いてから一度深呼吸をする。震える手で獄寺のシャツのボタンを外して前をくつろげれば、現れたピンク色の飾りに思わず我を失いそうになる。 「あれ……もう乳首たってる?」 たってるものはたってるし。と喉元まで出かかった言葉は飲み込んで、俺はだまってその飾りを指で挟んだ。小さな乳首には柔らかさはないけれど、指で転がる感触が気持ちいい。少し力を込めてつまめば「んんっ」と少し高い声が聞こえた。 「獄寺、気持ちいい?」 みれば獄寺は真っ赤な顔をしていて、目じりには涙も浮かんでいる。可愛い。泣かせてみたい。そう思ってしまう自分が最低だなと思いながらも、欲求には逆らえなくて。 「なっ……」 驚いたような声をだす獄寺を無視して、そのまま舌でそこをなめる。ころころと舌で転がすと少し大きくなったので、前歯で小さくかんでやった。 「ん……や、やめっ!」 やめろと言われてやめられる男が果たしているものか。獄寺の心臓がどくどくと脈うっているのがわかる。乳首のまわりを舌でなぞって、また噛んで。あいた方の突起は指できゅっと強く摘んだり爪を立てたりとしていると、獄寺の手が俺の頭に伸びて押さえつけられてしまった。 「獄寺、かわいい……」 何せお互い初めてのことだから、どうすればいいのかよくわからない。アダルトビデオのように上手くいかないことだけは何となくわかっているけど、期待と不安で胸が苦しくなる。 俺はすっかり立ち上がった胸から離れて、獄寺のズボンに手を掛けた。チャックをはずして脱がせようとすると、また静止の声がかかる。 「ちょ、ちょっと待て山本!」 自分でも何が大丈夫なんだろう。と思いながらも、止めようとする獄寺の手をどけて下着まで一気に下ろした。 「あ、……み、見んなっ!」 それがよっぽど恥ずかしかったのか、獄寺はシーツを無理矢理たぐりよせて前を隠し横向きになってしまう。 「見せて、獄寺」 首や背中にキスをしながらねだるけれどやっぱり獄寺は首を横に振るばかり。ああでも確かに恥ずかしいよな、とは思う。例えば俺が獄寺だったら、やっぱり嫌だと思う。やっぱり男同士だし。相手に同じもんついてんのにわざわざ見せて喜ばれるもんじゃないと思うし。それで幻滅されたくないし。 静かな声でそういうと、獄寺の肩がぴくりと震えた。 「や……まもと?」 するのを諦めたと思ったのか、獄寺が不安気な顔で振り向く。俺はそれに優しく笑って、自分もまたシャツとズボンを脱いだ。 「なっ」 獄寺のことばかり考えていたせいか、もう俺の前はすっかり勃ちあがっている。やっぱり見られるのは照れくさいなと思ったけど、ここは我慢だ。 だってお前が好きだから。 「獄寺のも、勃ってる」 ああよかった。気持ちよかったんだ。 「やまもと」 じっと獄寺をみつめていると、不安そうに名前を呼ぶ声が聞こえた。俺はそれにキスで応えて、獄寺の前をそっと手のひらで包む。 「あ……」 下から上へとすりあげてやるとそこは徐々に硬さを増していく。 「あんま、みんじゃねーよっ」 それは無理だって。だって目の前に獄寺がいるのに。 「なっ……や、め!」 抗議の声をあげる獄寺を無視して、歯をたてないように気をつけながらなるべく奥まで銜える。フェラなんてやられたこともなければ当然やったこともないので勝手がわからないけど、まーなんとかなるだろう。喉と唇をつかってとにかく全体をかわいがると、しょっぱい味がひろがった。一度口を離してみてみれば、獄寺の先端からはとろとろと透明な液があふれている。俺の唾液と獄寺の先走りで、光っているみたいにみえる。やらしい。 「んっ……く……」 かみ殺せなかった声が、荒い息にまざって耳に届く。俺はふたたび獄寺を銜えて、今度はそのしょっぱさを味わうように先端の割れ目に舌をたてた。 「はぁ……んっ、や、だ……」 よほど気持ちよかったのか獄寺の腰がさらに浮き上がる。とにかく鈴口を攻めながら開いた両手で竿を扱けば、獄寺自身がぴくんと震えて俺の口の中で苦いものが放たれた。 「あ……わ、わりぃっ」 また馬鹿ってののしられるかなと思ったのに、口より先に手が飛んできた。ぐーで頭をぽかんと殴られて、両手で頬をつかまれて伸ばされてしまう。 「いてー!」 真っ赤な顔をして怒る獄寺がかわいい。とか考えてたら伸ばされた口からさっき飲み干せなかった分の獄寺の精液がこぼれて、また殴られた。 「ほんとに出すんじゃねーよ!」 そんな理不尽な。 「なあ、獄寺」 何度も何度も頭の中で想像した獄寺のかわいい姿が目の前にあって、もう、無理。
「……慣らさないと駄目なんだよな」 確か。 あ、獄寺の視線がいたい。声にはださなねーけどアホという言葉が聞こえるきがする。 「……二段目」 そこってどこ? と思いながらも獄寺の視線のさきをみると、ベッドのよこの物置があって。不思議に思いながらもその二段目をあけると、ジェルとゴムが置かれていた。 「獄寺、これ」 のりますとも。こんなことされたら、調子にでもなんでものってしまう。嬉しい。
|