「じゃあ、失礼します」

 いそいそと獄寺の足の間にもどって、ジェルをだす。ピンク色がなんかやらしい。指先にとって少しのばしながら獄寺の後ろにそっとあてがった。

「いれるぞ」
「……ん」

 ぐっと少し力をこめて指をいれる。本来受け入れるべき器官ではないそこはそれの指をこばむようにしまるけど、無視して奥へと指をすすめた。
 熱い。

「ん……ぁ」
「どんな感じ?」
「……っかんね」
「痛い?」
「てか、くるし……」

 ジェルのおかげか痛さはないようで、ほっと胸をなでおろす。俺はさらに指を中まで入れて、ゆっくり出し入れを始めた。

「や……ん、んっ」
「もう一本、いくな」

 獄寺が痛くないようにとにかくゆっくりしようと思うのに、どうしても先を急いでしまう自分に舌打ちした。早く、早くいれたい。
 二本も指入れると獄寺の中はきつきつになってしまって、この中に俺をいれたらどうなってしまうんだろうと思う。ためしてみたい。早く。

「ってぇ……」

 さすがに痛いのか眉をしかめて獄寺が声をもらす。ぐいっと二本の指を奥まで突き入れて、中を広げるようにかき回すと獄寺の腰が少しういた。

「んんっ」

 指を曲げたりばらばらに動かしたり、入れたり出したり。性急になってしまう自分を止めらない。

「そろそろ、かな」

 本当はまだきつそうだけど、もう俺が我慢できない。びくんと肩を震わせる獄寺に心の中であやまって、ゴムを手に取った。

「い、入れるのか?」
「うん。駄目?」

 駄目といわれてももう無理だけど。

 ゴムの袋をやぶって、中身を取り出す。ていうかこれどうやってつけるんだろう。表裏とかあるんだろうか。
 考え込んでいると獄寺が不審げな顔で上半身を起こしてきた。

「何を悩んでんだよ」
「いや……表裏とかあるんかなとおもって」
「そんなんコッチが表にきまってるだろ。たぶん」

 俺の手からゴムを奪い取り中央辺りを人差し指でつくと、先端部分が顔をだした。

「あーなるほどな」
「馬鹿じゃねーの」
「んでこれをかぶせたらいいんだよな」
「そらそうしねーと使えねーだろ」
「えっと……」

 もたもたしている俺に痺れを切らしたのか、獄寺がため息をつく。それから、

「しょーがねーな。つけてやるよ」

 といった。

「え?」

 思わず聞き返すと、獄寺は不機嫌そうな顔で「ああ?」と眉間にシワを寄せる。ただ耳まで赤くなっていたので照れ隠しなのがばればれだけど。

「ちょっとこっちよれ」
「はい」

 手招きする獄寺に近寄ると、手が俺自身に伸びる。それだけでもう、いってしまうそうだった、
 
「無駄にでかい……」
「ん? なんかいったか?」
「なんでもねーよ。ちょっと黙れ」

 ちいさくなっているゴムを指で伸ばしながらかぶせていく。どことなく愛撫に似ている気がした。圧迫感があるというのに、気持ちいい。

「ほら、出来たぞ」
「うん」

 やばい、鼻血がでそう。でもここで出すわけにはいかないので、深呼吸をして自分を落ち着かせる。
 獄寺を抱きしめて、キスをする。舌をいれて中をあじわうように柔らかに蹂躙していくと、そっと獄寺も応えてくれた。
 そのまま押し倒して、足を割り開いて持ち上げる。

「もう、ほんと無理」
「わかってるよ、馬鹿」

 獄寺が歯をくいしばる。それにごめんともう一度あやまって、俺は獄寺の窄まりに自身をあてがった。

 ぐいっと力をこめて押し入ると、一気に獄寺の表情が変わる。

「い、ってえー!」

 今まで聞いたこともないような獄寺の悲鳴に、俺はびっくりして思わず動きを止めた。
 
「いてぇ、抜け、むり……っ」
「も、ちょっとだけ……」

 抜けといわれても俺も無理で。心の中で何度も「ごめんごめん」と呟きながらさらに腰を押し進める。

 とはいっても獄寺のナカは本当にきつくて、俺がびびっているのもあるんだろうけど中々入らない。ゴムが引っかかるのか先っちょがぎちぎち音を立てて、その度に獄寺から苦しそうな声が聞こえた。それでももっと先にいきたくて、一つになりたくて。自身に手を添えて無理に入れようとすると獄寺の足がバタバタと背中を蹴る。それを腕で押さえ込んで体重をのせると、ゴムが破れてしまった。

「あ……」

 情けない声を出してしまったことに軽く舌打ちをしながら腰を戻すと、獄寺の体から一気に力が抜けたのがわかった。
 まだ何もしていないのに、お互い息が荒い。とりあえず先端の破れてしまったゴムを外して、目じりに浮かんだ獄寺の涙をそっと指でぬぐう。

「…………わりぃ」

 ごめん。と謝ろうとしたら、先に獄寺からそんな言葉が飛んできた。少し目を伏せて唇を震わせて。
 恋人にこんなこと言わせちゃうとか、最低じゃん俺。獄寺は何も悪くないのに。悪いのは、無理に押し入ろうとした俺なのに。

「獄寺」

 いま謝ったら心が離れてしまう気がして、そっと名前をよんで体を抱きしめて引き寄せた。座ったまま抱きしめるとお互いの体がすこし汗ばんでいて、体温が熱い。

「好きだ」

 触れるだけのキスを鼻に頬に唇に落とす。髪をなでてからまた抱きしめる腕に力を込めると、獄寺の頭が俺の肩にうまった。

「……お、れも」

 そういって、獄寺もまた俺を抱きしめてくれる。こんなに好きなのに愛しいのに、一つになれないなんて嫌だ。
 
「あのさ」
「ん?」
「さっきゴムが引っかかって入らなくて」
「……おう」
「だから、いっかいこのままやってみねぇ?」

 外に出すから。というと、意外にも獄寺はあっさり「……しょうがねぇな」といってくれた。
 
「じゃあさ、そのまま俺の肩につかまっててくれな」
「って、このままするのかよ!」
「本に、初めてのときはこの体勢の方が痛くないって書いてあった気がする」

 それかバックと書いてあったけど、獄寺の顔がみれないのは辛い。
 獄寺は眉をよせて不審げな顔をしていたけれど、ちっと舌打ちをしてから俺の背中に腕を回した。
 あれやこれやと試行錯誤でお互い必死で格好悪いけど、それでも一つになりたい。

「ごくでら」

 名前を呼ぶと少し獄寺の腰が持ち上がる。そこに自身をあてると、さっきよりも直に獄寺の熱が感じられた。

「ん……んっ、あ」

 どうしても力のはいってしまう獄寺の肩に手を添えて、少し体重を落とさせる。指でまわりをほぐしながらゆっくり挿入すると、さっきよりは幾分スムーズ先端が中に入っていった。

「あ、んっ! い、たぁ……んっ」

 獄寺の頭が苦しそうに横に揺れる。交わる部分はやっぱりきつくて拒むような音がした。全力で押し返してこようとする中に、ぐいぐいと腰を少し突き上げて割りいる。正直、きつい。でもこんなの、獄寺の痛さにくらべたら全然割が合わない。

「いっ……、ん、んっ……」

 痛みに耐えるためか唇を噛みすぎて白くなっている。このままじゃ血が出てしまうんじゃないだろうか。

「な、獄寺」
「あ……」
「俺の肩、噛んどいて」

 そっと唇の輪郭をたどるように指を這わせて、安心させるように笑う。

「でも……」
「血が出てもいいから、食いちぎってもいい。獄寺だけが痛いとか、その方がいやだ。俺」

 真剣な声で納得させるように言えば、獄寺は少しだけ悩んでから小さくうなずいた。

「んっ」

 獄寺の歯が俺の肩に触れる。そこから熱が広がってくるようで、嬉しい。
 再び腰を動かして、少しずつ突き上げていく。すっかり萎えてしまった獄寺の前を手で労わってやりながら、少しずつ少しずつ。やはり苦しいのだろう荒い息と一緒に獄寺の歯が肩に食い込んで、傷みをちょっとでも分け合えているとおもったら嬉しかった。

 

「ごくでらっ」

 思いきって強く一度突き上げると、先端の大きくなっているところが全部入って。粘膜が絡みつくように熱く締め付けてくる。

「あと、もう、ちょい」
「んぁ、んっ」

 ぴりっとまた肩に痛みが走った。けれどもう、気にならない。
 なんだこれ、わからない。手とは明らかに違う熱、締め付ける粘膜、気持ちいい。
 全て忘れて獄寺が壊れてしまうぐらい突き上げたい。もっと気持ちよくなりたい。
 そんな本能が体中の毛を逆立たせる。けれど、それに従うわけにはいかない。今抱いているのは、大切な人だから。
 頑張ってくれ俺の理性。

「ゃ、……も、と」
「ん、ここにいるから」

 ぎゅっと抱きしめて少しずつ獄寺を押し倒す。肩から口がはなれてしまったので、その代わりに腕を差し出した。
 
「ふぁっ……んっ」

 ベッドに獄寺の背中が完全に預けられたのを確認して、足を高く持ち上げて挿入を再開する。もう先ほどまでの苦しさは無くて、ジェルのぬめりも手伝って少しずつゆっくりと、けれど確かに一つになっていく。

「ご、くでら」
「あっん、んっ」

 熱い。焼けてしまうようだと思った。
 世界中で獄寺のこの熱さを知っているのは、俺一人なんだ。

「んっ、ぁあ」

 最後にぐいっと力を込めると、全てが獄寺の中に納まる。やばい、気持ちいい。達ってしまいそうだ。
 中でいくわけにはいかないし、せっかく入ったのを抜くもの絶対嫌だったので歯を食いしばって耐える。

「獄寺、は、いったぜ」
「んっ」
「ま、だ。いてぇ?」
「ん」
「好きだ」

 好きだ。好きだ。好きだ。たまらないぐらい好き。狂いそうなぐらい好き。死ぬほど好き。
 いま、俺がこの世界で一番獄寺に近いところにいる。繋がっている。
 それが嬉しくて、瞼が熱いと思ったら涙が頬に流れた。

「……ぁ、ん。な、くなよっ。馬鹿」
「だって」

 獄寺の震える手が伸びて、俺の髪を撫でる。どっちが抱かれているんだかわかったもんじゃない。
 
「獄寺、汗、かいてる」
「お、まえもな」
「なんか、格好わりいな、俺」
「い、まに……は、じまったことじゃねー、だろ」

 確かに。
 もっと喜びを伝えたいのに、もう俺の腰は自然と動き始めていて、自分の本能が恨めしい。

「動くぜ」

 また獄寺が唇をかまないように、離れてしまった腕をそっと口に添える。

「あぁ……んっ」
「ん、ご、くでら」

 ゆるゆると腰を動かすと、中が絡みつく。俺だけが気持ちいいなんて絶対嫌で、獄寺の前を手で扱いてやると、とろとろとまた透明な液がでてきた。

「あ……んっ」

 奥へ奥へ。細かく突き上げるように腰を動かすと、すぐに快感が訪れる。もう我慢できないかも、と思ったとき獄寺から高い声が漏れた。

「は、ああっ、あっんっ」
「え?」

 いままでの痛みに耐えるような声とは違うかすれた声に、びくりと動きが止まる。

「ごくでら?」
「そ、こ、……なんか」

 気持ち、いいんだろうか。でもそれをゆっくり探っている余裕はなくて、とにかく獄寺が「そこ」といったあたりに当てるようにしながら前を扱く指に力を込める。

「わり……も、無理」

 限界。
 達する前に引き抜こうとしたら、獄寺の腕がのびてきて腰を押さえられた。