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「え、ちょっ、獄寺!」
「い、いからっ」
肩でおおきく息をしながら、目をきゅっと閉じて。もうその顔だけで十分俺の心臓に悪いというのに、獄寺はさらに俺に追い討ちをかける。
「な、かに。だして、いいから……っ」
くらり、と。視界がゆがんだ。
ただでさえ初めて感じる快感を持て余しているというのに、獄寺はひどい。
本当なら獄寺が泣いてしまうぐらい気持ちよくしてあげて、俺だって格好つけてちゃんと余裕があるところをみせたいのに。
どうして獄寺相手だとこんなに上手くいかないのか。
「ご、くでら……っ」
正直、理性があったのはそこまでだった。
じんじんと脳がしびれて、体中の熱が下腹に集まっていく。突き上げたい、という衝動のままに奥へ奥へと何度かきつく貪って。
「あ、あっ、いっ、ああっん」
「んっ」
あ、達く。とは、頭のすみっこで冷静に思った。それと殆ど同時に、キスしたいと思った。
それからの動作は自分でもやけにゆっくりに思えて。
腰を深くうちつけた後、獄寺の頬をつかんで口づける。舌を入れれば獄寺も応えてくれた。
口の中もすごく熱くなっていて、舌先が溶け合う。ただのキスなのに、すごく気持ちいい。まるで口腔でセックスをしているみたいだ。
ああ、俺すげー幸せ。今まで生きてきた中でこんな満足感を感じたことがない。獄寺も、同じ気持ちだったらいいのに。熱くて焼けそうなのに、暖かくて溶けそうな感じ。色んな感情が痺れて混ざって快感になる。
そして、獄寺の中で達った。
「ふぁ、んっ」
心臓が熱い。胸が焼ける。体中の血管がドクドクと音を立てる。体中がしびれて、頭が真っ白になる。
気持ちいい、けど虚脱感に似て一気に力がぬける。
ふと見ると獄寺はまだ達っていないようで、あわてて右手でこすると「んっ」とかわいい声をあげて、獄寺もまた欲望を吐き出した。
まあ少しズルをしたけど、一緒にいけたということで。
「獄寺……」
「ん……ぁ」
「好き」
「ん」
獄寺のナカから出たくなくて、繋がったまま抱きしめて触れるだけのキスをすると、両腕が伸びてきて首に絡まった。
ああ、本当に、好き。大好き。
「獄寺」
「……んだよ」
「ありがとう」
生まれてきてくれて。というと、獄寺は小さく笑って「逆だろう」といった。
もう一度キスをしようと思ったら、獄寺の瞼が半分ぐらいおちていて、慌てて獄寺の頬を軽く叩く。
「ちょ、獄寺! 寝るなって」
「ん……ねみぃ」
「俺も眠いけど、ナカで出したから、風呂はいらねーと」
「ん……」
あ、やばい。もう殆ど意識がない。
思わずナカで出してしまったけど、事前学習によるとそのままにしておくとお腹を壊してしまうことがあるらしい。
俺のせいで獄寺が辛い思いするなんて嫌だし、そのせいで「もうしない」とかいわれたら泣く。絶対泣く。
「ほら、立てって」
それからの俺たちは本当にムードも何もなく。
事後のお風呂とか、甘いムードでいちゃつきながら入って、あわよくばもう一回というものだと思っていたけど、それどころじゃなかった。
立たせたら「痛い」とか「歩けない」とか「眠い」と駄々をこねる獄寺を、半ば背負うように肩を貸しながら風呂場に連れて行って処理をしようとすれば、
「一人で、できる」
と、真っ赤な顔できっぱりといった。
仕方がないので湯船にはいって見守っていたら、後ろを向けといわれたので背中をむけて、時々聞こえてくる「んっ」とか「くっ」とかいうかみ殺した声にまた立ち上がりかける自分を説得して。
そうこうしている間に、いつの間にか眠っていた。
「おい、山本」
目を覚ました頃には、獄寺はすっかりコトを終えてしまった後で、もったいないなと思ったけれど、眠気には勝てない。
獄寺も、ひどく眠たそうだった。
こういうところがガキなんだろうな。と思いつつも、慣れない行為に思いのほか体力を使った俺たちは、裸のままベッドに転がりこんで睡魔に身をまかせる。
布団の中。がっちり獄寺を掴んで、逃げないように抱きしめて。どうか神様、この幸せが消えてしまいませんように。と、すがるように祈った。
その日、獄寺の夢をみた。
寝ている俺に、優しくキスをしてくれる夢。
そして囁くように、一言。
Buon compleanno
なんだよ獄寺、俺馬鹿だからそんな難しい英語わかんねーよ。あれ、なんで知らない英語が夢に出てくるんだ。
まあ、いいか。いま、俺、なんかわかんねーけど、すげぇ幸せだから。
目が覚めたら、獄寺にキスをしよう。そして、抱きしめて。言うんだ。
好きだよ。って。
end...