VS


 


(なんか、体が……おかしい)

違和感を感じたのは、山本の家をでてすぐだった。
学校の帰り道、誘われるままに山本の家によって、寿司を食べてキスをしたのが、ついさっきのこと。
泊まっていけと言われたけれど無視をした。
下心が服をきて歩いてるような奴の家にとまるなんて、とんでもない。

なのに、
(泊まってけば、よかったか?)
早くも獄寺は後悔していた。

目眩かする。頭が頭痛のように重たい。息があがる。体があつい。

さっきまでは何ともなかったというのに、今はたつことすら難しいのだ。

一刻も早く、家へ。その一心で、普段は通らない近道へ進む。街頭のあかりすらない、気味の悪い道だ。昔棲んでいたスラム街を思い出す。

(だめだ……)

目眩が強くなり、たまらず近くの壁にもたれかかる。
不本意だが馬鹿を呼ぶか、と携帯を取り出したところで後ろから突然抱きすくめられた。

「なっ……!」

声をあげようと口を開いたところを、大きな手のひらでおさえつけられる。
相手は、男だ。

「んん! ……ん!」

油断していた。普段ならば力ずくでにげだすが、なにしろ体に力がはいらない。男の指がズボンのジッパーをおろし、おもむろに前の欲望に手をかけた。

「……ぁんっ」

おさえつけられた手のひらの間から声がもれる。
獄寺は信じられないおもいで、自分の体を見下ろした。

(なんでだよ、俺)

山本以外の人間にさわられて声をあげている自分が信じられない。

男の手が自身を強く弱くしごきあげると、あっけなく獄寺は達ってしまった。
白濁がこぼれるのと同時に、涙がこぼれる。

(……い、やだ)

山本でないといやな、はずなのに。
ふと男の両手がはなれ、体をつかって壁に獄寺をおしつける。そして布でその相貌を覆ってしまった。

「……や、めっ!」

獄寺の悲鳴を無視して、男は服をまくしあげて背骨をつたうように舌はわせる。それだけで、また達っしてしまいそうだった。

(なんで……、なんでだよ!)

いつも以上に敏感になってしまっている体に情けなさを感じながらも、自身は正直に勃ちあがってしまう。
「は……ん、くっ」

声をおさえようと歯を食い縛ったところで、男の舌が獄寺の後ろの窄まりに到達した。

「ゃ……、ぁあ!」

ちゅぷ、と。わざといやらしい音をたてて男の舌が中をさぐる。何度も繰り返した山本との行為でやわらかくなっていたそこは、いとも簡単に舌を飲み込んでしまった。

「はぁ、あっ、ん! くぅ、あぁ!」

もともと熱を帯びていた体は、その快感に耐えられるはずもなく、もはやあがる声を押さえられない。

「ひぁ、あ、んっ、く……」

中をさぐる舌に便乗して、指が一本入り込んでくる。何度も何度も出し入れをしながら、三本まで入れられてしまった。

「ひぁ、ああ! や、めっ!」

指をクの字にまげ、まるで知っていたかのように、獄寺のいいところを刺激してくる。
何度も繰り返しそこをすられてしまえば、もはやひとたまりもない。
獄寺は二度目の欲望を吐き出した。


「はっ、あ……ん」

たっている力もなくなり、崩れ落ちる体を男が背後から持ち上げる。そして前をむかせ、獄寺の片足を己の肩にかけさせた。

「ひっ、あ……や、め! やめ……ぁ、ろ!」

男の欲望が、獄寺の窄まりにおしつけられる。
ふさがれた目の向こうに、なぜ山本がいないのか。

「ぁん、あっも……と」


山本以外の男のものを受け入れるなんて、冗談じゃない。
けれど、男のものは少しづつ中に侵入してきてしまっている。

(山本、怒るだろうな)
(泣くかも)
(秘密に、しておけるか?)
(あいつ、以外にするどいからな……)

目をふさがれているのは好都合だった。山本を想像できる。

「ぁあ、んっ、や……っ」
半分ぐらいまで入ったとたん、相手も余裕がなくなったのか一気に突き上げられた。

「あっ、んっ、ぁ、ああ!」

小刻みに、何度もうちつけられ理性など飛んでしまいそうで。
いつのまにか両足をもちあげられ、獄寺は落とされないようにしがみつくしかなかった。
深くつきいれられ、気持ちいいのか苦しいのか悲しいのかわからない涙がながれる。

「や……もと、や、まもとぉ!」

切なく名前を呼ぶと、

「んっ、ごくでら」

と返ってきた。

(……ちょっとまて)

なけなしの力を振り絞って両手をはなして目隠しに手をかける。するとバランスが崩れて落ちてしまいそうになるのを、男があわてて支えた。

「あ……」

やば。と言う声が聞こえた。確かに聞こえた。

「て……めっーー!」

目隠しの闇に慣れた目はすぐに夜の闇にも順応して、見知った人物を映し出す。

「なにしてやがる!」
「え、と……レイプごっこ?」
「ごっこじゃねー! レイプだこれは!」

人がどれだけ……、と叫ぼうとしたら涙がこぼれて、あわてて山本をなぐりつけた。

「わ、ごめん獄寺! ってまだ入ってるから!」
「さっさと抜けよ!」

と殴り付けると、山本はあえてよけずに頬にうけて、それからキスをおとす。

「ごめん、それは無理」

言うが早いか、少しも萎えていない自身で再び突き上げた。

「んっ、ち、くしょ……あぁ!」

すぐに獄寺にも、絶頂がやってきた。
何度も落とされる口付けに不覚にも安心して、獄寺は三度目の快感を手にしたのだった。

 

「変態」
「はい」
「頭おかしいぞ、てめえ」
「すみませんでした」

完璧に足腰たたなくなってしまった獄寺をおぶって、家へと向かう。
もちろん獄寺宅だ。

「だってせっかく一服もったのに帰るとかいうから」
「ぁあ!? なんかいったか!?」
「何でもありません」

そんな言葉をきかれてしまっては、もうさしてもらえないかもしれない。山本はあわてて首をふった。

「人が……どんだけ」

不安だったと思ってる。とは言葉にならなかったけれど、確かに山本には聞こえて。

「もうしない」
「当たり前だ!」

いって、ぎゅっと一度山本の首を締めあげた。

そして、

(お前だとわかって、むかつくより安心したなんて……)

絶対にいってやるものかとおもった。
 

 

山本が変態すぎる・・・でも、愛ゆえ!