「獄寺、お願いがあるんだけど」
「断る」
「いやいや、ちょっとまてって」


・・More,more・・



山本が部屋に泊まりにきた。
そんなのは別にいつものことで、次の日が休みだったらそのまま致してしまうのもいつものこと。
時計の針が仲良く上をむく午前0時。だらだらと成り行きでベッドの中で裸になった俺に、まだ生意気にズボンをはいている山本が乗っかって。
そのままするんだろうと思っていたら、突然山本がベッドの空いたところで正座をして、そんなことをいったのだ。
 
もう一度確認をするならば。
山本が部屋に泊まる。いつものことだ。
セックスをする。認めるのもしゃくだが、いつものことだ。
それを今更こんなときに正座してまで頼むとは思えない。

絶対ろくでもない「お願い」に決まってる。

「待つかあほ。もういい、俺は寝る」
「ああ! ごめん、ごめんって! 獄寺!」
「謝るって事は、やっぱくだらねぇ頼みだったんだろうが」
「う……く、くだらなくはねぇよ!」

へぇ。と、俺は出来る限り小ばかにした顔をつくって、そういった。
 
「じゃあ、聞くだけ聞いてやるよ。何だ」
「いや……その」
「ほら、くだらなくねぇんだろ? 言えよ、早く」
「えー……っと」
「ああ、もういい。寝る。おやすみ」
「あっ、ちょっと待てって!」

なかなか口を割らない山本に、面倒くさくなって布団を頭までかぶって隠れる。すると山本は慌てた声をだして、いまかぶった布団をむりやりはぎ、俺の額にキスをした。
それから少し赤い顔をしてうつむいて、

「口で、して」

といった。

……ほんと、くだらねぇんですけど。

「は?」と言うことも睨むことも出来ずに呆然としている俺に、山本はおずおずともう一度俺の額にキスをする。
 
「駄目?」

いやいや。そのでかい図体で甘えても全然可愛くないからな。お前は。
だいたい口でとか、ほんとどこで覚えてきたんだ。そんな無駄な知識を身につけてる暇があれば勉強しやがれ万年補習馬鹿。

「獄寺?」

黙りこんだ俺を、山本が伺うような視線で見る。
俺はとりあえず頭に浮かんだ罵詈雑言をこの馬鹿にぶつけてやろうと体を起こして。

それから、少し立ち上がった山本のものを取り出して、おもむろにくわえ込んだ。

「え?」

山本が信じられないといわんばかりの声をだす。
信じられないのは、俺のほうだ。この馬鹿。

山本を徹底的にけなすために開いた口で、なぜこいつを歓ばせているのか、それがわからなくて理由をさがす。

そうだ。いつもいつもお前に好き勝手にやられているのはすごく理不尽だし、たまには俺が主導権をにぎってこいつに参ったといわせるのも面白いかもしれないと。
そう思っただけだ。
別に、やってやればお前が喜ぶだろうとか。嬉しそうに笑うんだろうとか。
そんなことをおもったわけでは、決してない。だんじてない。絶対無い。

「黙ってろ」

え、とか。まじで、とか。いいの、とか。ほんとに、とか。
俺の頭の上でうるさいく呟く山本にそれだけいって黙らせて、俺は再び山本のモノを口にふくんだ。
さっきよりも幾分おおきくなったそこを、一度口の奥まで招き入れて舌でなぞりながらまた外に出す。

「んっ」

山本のかすれた声が聞こえる。荒い息も。
裏筋を舌でなぞれば、またそこが力を持った。浮き出た筋を丁寧に舐めて指でさする。先端のなめらかな部分を焦らすように舌先で遊べば、口の中に苦味が走った。
それが嫌でないというのだから、本当に不思議だと思う。
俺も男で、お前も男で。俺もお前も、ちゃんと女が好きで。まさか男のナニを舐めることになると俺が思わなかったように、こいつだって男に舐められる日がくるとは思わなかったに違いない。

ていうか、こいつこんなにでかかったかだろうか? 
こんなものが、本当にいつも俺んナカに入ってるんだろうか。
そんなことを思わず考えて、自分の下腹もずんと熱くなる。自然と、夢中になって。
もう苦味も気にならなくて、口に唾液をためてから舌から吸い上げればじゅぷじゅぷといやらしい音がした。鈴口に舌をたてると、また上から切なげな声を落ちてきて。
ふと、山本をみあげると必死な顔をしていた。真っ赤になって、下唇をかんでいるのはいくのを耐えているからだろうか。目元も、少しうるんでいる。
そんなに気持ちいいか。山本。
 
なんとなく、悪い気はしない。
いつもは山本にいいようにされて。挿れられて突き上げられて、わけもわからない間に気持ちがいいだけになっていて。山本の様子なんて、よくわからないけど。
俺の中にはいってイくときも、いつもそんな顔をしてるんだろうか。

胸がきゅっと甘くしびれる。ずんずんと、下腹に熱があつまる。
山本が欲しい、と。素直に思った。

「すきだ、ごくでら」

俺も、好きだ。
そういってやろうと口を離した瞬間、山本の切羽詰まった声が聞こえた。

「あ、獄寺ごめ……も、無理」

いや、言うの遅いだろお前。とか、突っ込んでる暇などあるわけがなく。
あわてて顔を離した瞬間、目の前に白いものが飛び散った。

「……あ、ごめ」

少し息のあがった、あからさまにすっきりした山本の声が聞こえる。が、俺の脳にまでは響かない。
おそるおそる顔をさわると、ぬるぬるとした感触とともに、手に白いものがついた。
 
「や、や……やま」
「ごめん獄寺! つい」
「つ、つい、ついって…なぁっ!」
「あーなんか拭くもん、まじごめん」

怒りで打ち震える俺を見て見ぬ振りして、山本がティッシュを探る。手探りで見つけて俺の顔を拭こうとして、山本の動きがとまった。

「……えろい、獄寺」

いい度胸だ。

いくら俺が温厚だといっても限度があるぞ、おい。

俺はあらかじめ作っておいた力拳にさらに力をこめて、おもいきり振り上げた。

「果てろ……っ!」
「い、てぇえ! 何で!?」
「何でじゃねぇだろが! てめぇで考えろ!」

あまりに腹が立ったのでもう一度殴ってやろうと拳を上げてから、山本の異変に気付いた。

「お、おい。山本?」
「え?」
「何、泣いてんだよ……」

泣くぐらい痛かっただろうか。いや、コレぐらいなら日常茶飯事だ。
とりあえず振り上げた拳をどこにおろしていいかがわからなくて、仕方なく山本の頭のうえにおいて髪の毛をがしがしとかき混ぜた。

「だって……、獄寺、口でして、くれただろ」
「それが、どうかしたのかよ」
「獄寺も俺のことちゃんと好きなんだな、思って」
「…………はあ?」

意味がわからない。
山本がいっている言葉も、泣いているわけも、顔射とかされたわけも(たぶんこれは理由ない)。

「……何か、吹き込まれたか?」
「え?」
「どうせ、また部活の先輩とやらに余計なこと言われたんだろうが」

とりあえず山本の手からティッシュを奪い取って、自分の顔をふきとりながら訊ねる。それをみた山本がそっと自分の指で吐き出したものをすくった。

「口でしてくれないのは、愛されてないからだって」
「へぇ」
「遊ばれてるだけだって、言われた」
「ほぉ」
「最近獄寺、ちょっと冷たかったし。ほんとに愛されてるのか、俺……不安だったんだよ」
「……で?」

不安は晴れたのか? と聞いたら、「うん」と返ってきて。
俺の気持ちよりお前の部活の先輩のいうことを信じるのかとか。だいたい好きでもない野郎と俺がするとおもうのかとか。とりあえず顔射はないだろう。とか言いたいことはたくさんあったけど、とりあえずそれは明日に持ち越すことにして。

まだぽろぽろと泣いている山本の涙を、いまこいつの精液をふいたティッシュでぬぐってやる。ざまあみろとか思ったら、素直にありがとうとかいわれて、これも明日文句を言ってやろうと思う。


今はただ、山本の熱が恋しくて愛しくて。

そっと山本に口づけて、キスの先をねだった。
 

 

ゴット!月嶋さんとの間で大ブームした、がん☆ゃ獄!
なおつんに捧げます!