unripe
(違う違う違う、これは気の迷いだ。若さの暴走だ。むしろ呪いだ) 隣で呑気に寝息をたてる山本をじっと見つめながら、獄寺は必死で湧き上がる衝動を否定するが、腹の底が熱くなるのは押さえられない。 (オレは、ホモじゃない) そもそも山本なんて、嫌いなのだ。 (そうだ、オレは、山本が、大嫌いだっ) 自分に言い聞かせるように心の中で叫ぶけれど、体を支配する熱はどこへも逃げてはいかない。落とされた照明のなか、山本を見る。最初はうっすらとぼやけていた輪郭も、暗闇になれた目はその姿をはっきりと映し出した。 「……やまもと」 小さく名前を呼ぶが、起きない。 「おい、やまもと」 今度はもう少し大きな声で呼ぶけれど、やはり起きない。 (畜生……っ) すべて若さのせいだと言い訳をしながら、獄寺は上半身を起こして山本の顔を覗き込む。そして恐る恐る指を伸ばして、顔を輪郭をなぞった。 このシャープな顎のラインは、好きだと思う。触ってみなければわからないほどわずかに貼ったえらの感触も、嫌いじゃない。 (ちょっとだけ) 今度は指を唇へ移動させ、その形をなぞった。一見形の整ったそこは、触れてみると少し薄くて上唇が突き出ている。 (……おきんなよ) 唇を離すのがなんとくなく、もったいなくて。そのまま少し口を開いて、舌で山本の唇をなぞる。出来ればアホみたいに開いた口の中まで侵入したかったけれど、さすがに起きるかとぐっとこらえた。
いつか、この唇に自分以外の人間のものが触れるのだろう。 (これは……なんだ?) なぜ、逃げてしまったのか。どうして、山本がキスをするところを見たくないなどと思ってしまったのか。 (オレは、オレは山本なんて嫌いだ) それなのに、熱くなるこの体はなんなのか。 |
MAJIで恋する五秒前の獄寺くん。
山本バージョンに続きます。