ICE MAN
「氷になりたい」と突然山本がいったので、ああ暑さで頭がやられたのかと同情することにした。 山本の野球の練習に付き合った後、どこかへ遊びにいこうかと誘われたけど、あまりの暑さに出かけるきもしなくて、オレの家に直行した。 「オレなんか暑いって理由だけで獄寺に近づけさせて貰えないのにさ、氷は冷たいって理由だけで獄寺の中に入れてもらえるんだぜ?」 夏は暑い。 「オレも獄寺の中に入りてぇよ」 てめえそれ絶対わざと言ってるだろ。 「だって獄寺オレが近寄るだけでも嫌がるじゃん」 少し口を開いて会話をすれば、さっきまでの氷の余韻はすぐになくなってしまう。 「オレは暑いときでも寒いときでも、獄寺がいいけどな」 だからなんでお前はそう恥ずかしいことを言うんだ。と声を出す前に、山本の手が伸びてきた。 「だ、だから暑いっていってるだろうが!」 ただでさえお前は体温が暑いんだ。自覚しやがれ。 「暑くなかったらいいんだろ?」 悪戯気に笑ったと思えば、強引に引き寄せられてキスを仕掛けてくる。意地でも抵抗しようと一文字に結んだ唇をからかうように、山本の舌が輪郭をなぞった。 「ん……」 おもわず開いてしまったその隙間から、侵入してくる柔らかな感触。舌を引っ込めて抵抗しようと思うのに、優しく誘われてしまえばつい反応してしまう。 「はぁ……んっ」 何度も角度を変えてキスをされ、口を離した時に伸びた唾液を、小さな口付けで攫っていく。 「なら、もっと気持ちよくさせてやるな」 だからどこから来るんだよ、その自信は。 「ん、なっ……」 山本の熱い舌から零れ落ちてくる、冷たい水滴。それはオレの舌をつたって、喉へと流れ込んでいって。 「て……めっ」 恥ずかしさと居心地の悪さに強く睨めば、山本の手のひらが伸びてきて、目を覆われてしまう。 「やっぱりオレ、氷になれなくてもいいかも」 よいしょと掛け声をかけてオレを膝の上にのせてくる。そうするとどうしても熱を持った固いものを無視することが出来なくて、のぼってくる熱をかくすように山本の肩に顔を隠した。 「だって氷だった、獄寺の気持ち良さそうな顔みれないしな」 ふげけんな。と思うのに、もう体はいうことを聞かなくて。また含んだ氷を唇に挟んで、喉元に押し付けてくるのを拒むことができない。 「だから獄寺、続きしていい?」 だめだ。といいたいのに。突き放して暑苦しいといってやりたいのに。
山本の指が、服のボタンにかかる。開かれていくそこかしこに、氷と一緒にキスが落ちてきて。 |
一周年記念無料配布本に載せたもの。
暑さで頭をやられていたのは私です。