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迎春。
山本の部屋の小さなコタツに肩まで埋もれながら、獄寺は適当な相づちをうった。会話よりも、手に持ったミカンをむくほうに集中しているらしい。 「なあ獄寺きいてる?」 獄寺の意識はひたすら、ミカンに向いている。実と皮との間の白い繊維をむきながら、ときどきテレビの漫才に耳を傾けている。 「で?」 構ってもらえずすね始めた山本を横目に、先を促す。 「やりたかった」 本日は元旦。一月一日。 山本のオヤジさんは知り合いの店に手伝いに呼ばれたらしく、仕事にでかけてしまっている。 「確かにオヤジ、獄寺がいるなら安心だっていってたけど」 まだ山本は不満らしかった。 「あーあ。折角いっぱい予定たてたのになあ」 ぽつりともらすと、山本の顔がぱあと明るくなった。 「な、なんだよ」 一気に元気になって返事をする山本に、獄寺もしらず笑顔になってしまう。 「ミカンむけ」 照れ隠しとばかりに下をむいて獄寺がつぶやけば、機嫌よくミカンをむきはじめる。 「あと、餅もくいてー」 (扱いやすいやつ) (ま、山本だしな) ということで、自分を納得させる。 「おせちも置いてってくれてるから、あとで食おうな!」 お皿の上にぷっくりと膨れたお餅を二つのせて、山本が帰ってきた。 「おせち……いいな」 餅の膨れた部分を箸でつつき、醤油をたらして、獄寺の口の前に運ぶ。腹の虫を呼び覚ますいい匂いに思わず口を開きかけて、慌てて首を振った。 「……何だよ」 普通病人に食わしてやるもんじゃねぇのか!? と、思ったけれども口にはせずに飲み込む。 (じゃあ食わしてくれ、とかいわれたら後が面倒だ) それでも食べるものかと必死で口を閉じて抵抗をしていた獄寺だったが、目の前で餅が固く冷たくなっていくのには耐えられなかった。 「畜生」 と文句を言いがてら口を開けば、 「へへ……、あーん」 と、呑気な声が返ってくる。 「んー、き、れねえ」 不満げに獄寺がうなっていると、何をおもったのか山本が餅の反対側を口に銜えた。 「あにしてんあよ!」 ふざけるな。といいたいが、口の中の餅のせいでまったく言葉にならない。 「いいからいいから」 何がいいんだよ! と言いたいのに、山本の笑顔にさえぎられてしまう。 (これは、もしや……) このままキスをしようという魂胆ではなかろうか。と。 「……あー」 あからさまに残念な声をだす山本を力一杯睨みつけて、獄寺は慌ててちぎれた先の餅を口の中へと運ぶ。 「バカだろ、てめえ」 そういう獄寺も、ほっとしたような。 (残念なわけねえだろうが、バカは俺だ!) ぶんぶんと頭をふって前を向けば、照れたように笑う山本の顔があって。 「なんかネバネバするな」 それから、もう一度キスをする。 「俺いま、スゲェ幸せだ。獄寺」 「なあ獄寺」
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去年の年賀小説の再録です。
年賀メールで申し込みいただいた方にメールで配信させていただいた
のですが、一年以上たったということで、少し修正してアップ。
去年からずっとお付き合いいただいている方にも、今年から初めましての
方にも、本年もどうか宜しくお願いします。