'07 Valentine SS
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ビター
校舎の裏。震える手で差し伸べられたチョコレートを見下ろしながら、獄寺は困って肩をすくめた。 わかってるなら持って帰ってくれたらいいのに、と思うのだけど泣きそうな顔を見てしまえば強くもでれない。 「じゃあ……」 と。いうが早いか、その少女は猪のごとく突進して獄寺に無理矢理チョコを渡し、そのまま走り去っていったのだった。
そして事のあらましを黙って聞いていた山本は、適当な返事をしながらその問題のチョコレートをひとつ口に運んだ。 「そんな理由なら仕方ないよな」 二月十四日、バレンタイン。 「まあオレは一個も貰ってないけどな」 くしゃりと顔を崩して爽やかに笑う山本を、鋭く睨みつける。 「だからオレは断ったつってるだろうが!」 はは、と笑みを崩さない山本に、獄寺は小さく肩をすくめた。 (もっと、怒るかと思ったけどな) 正直、拍子抜けである。 (何だ、この程度の反応かよ) つまらない。という言葉が、胸に浮かんだ。 「……獄寺?」 知らず知らずのうちにうつむいて考え込んでしまっていた獄寺の名を、不思議そうに呼ぶ。 「なあ、妬かねえの?」 獄寺の視線の先にはタバコがある。その先には小さな机と灰皿、とチョコレート。さらにその向こう側で、山本が少し目を大きくした。けれど数回瞬きをしたあと、すぐにまたくしゃりを顔を崩す。 机より向こうにいたはずの山本は、ずいと無駄にでかい体をのばして獄寺の正面に現れた。 「馬鹿じゃねえの? 獄寺」 山本は笑みを崩すことなく、いつの間にか手に取っていたチョコレートをこれみよがしに口にくわえる。 「これ手作りだよな。獄寺のために作ったのに、その恋人がたべるなんて思ってなかっただろうな」 そういうトコ、獄寺は無神経だし。と、なんでもないことのように囁いて、そのまま口付けた。 「ましてや、こんな風に使われるなんて夢にも思ってなかっただろうし」 唇についたチョコレートを濡れた舌で掬い取って、目を細めて獄寺を見つめた。 「いい気味だろ」 人のモノに手を出すなよなー。という山本の声音がまったく笑っていなかったので、とりあえず獄寺は聞こえないふりをした。 「オレもさ、いつまでも子供みたいに文句言ってても仕方ねーし、色々考えたんだよ。ちょっとでも獄寺にオレの気持ちをわかってもらうために、今年から体を張ることにしたのな」 嫌な予感がした。 誰がするか! と文句を言うはずの口は先に舌に絡めとられて言葉に出来ない。変なところで要領のよくなりすぎた男を睨みつけるが、それもするりを交わされた。 (畜生! 最初からてめぇこのつもりだったんじゃねえか!) 果てしてこれが大人になる、ということなかはわからないけれど。 |
ということで、短いですがバレンタインSSです。
間に合ったー!(間に合ってないです
高校の山獄って、実は大好きです。