|
山本武と言う男が実は典型的なO型であって、細かい作業が嫌いなのを知っている。ただ嫌いだからといって、不得意というわけではないのだと言うことを、獄寺はいま改めて実感していた。 「んで、ここをこーやって、こうだろ」 長く節ばった指が、起用に短冊を折り曲げていく。もとは長方形であった短冊は、少しずつ違う形へと生まれ変わろうとしていた。 「んでもって、ここにこの角を入れると……出来た!」 つまらない、という心情を隠そうともせず前面に押し出している獄寺のことは気にもとめず、山本は晴れやかな笑顔と共に声をあげた。 「なんだよ、それ」 見えなくはない。むしろどうみてもハートである。ハート以外の何モノでもない。 「クラスの女子に教えてもらったのな! ほら、もうすぐ七夕だろ?」 いかにも興味がないという振りで頷くものの、内心は苦虫を噛み潰したようで。 賑やかだった山本の話し声が消え、放課後の教室に静寂が広がる。 「……秘密」 そして耐え難い沈黙の後に返ってきたのは、そんな言葉と泣き笑いのような表情だった。 いつから、彼はそんな表情をするようになったのか。春の日の太陽のように暖かく真っ直ぐな山本の笑顔が、陰り始めたのはいつの日か。 女子の間に、七夕のおまじないが流行っているのは耳にしていた。 (好きだ。オレは、山本。お前が、好きだよ) 眉間にしわを寄せ、タバコを噛んでいなければ、うかつにも言葉にしてしまいそうで怖かった。 なら止めておけよ。と、喉元まで出かかった言葉を飲み込む。 「あっ、ひで!」 角度を変えながら空いた穴を見る山本の表情は、さっきよりも幾分かましに見えて、少しだけ気分が晴れた。 (止めておけよ。そんな叶わない相手なんて、止めとけ) オレにしておけよ。 end |